矯正後の「後戻り」はなぜ起きる?原因・リスク・リテーナー(保定)まで、できるだけわかりやすく解説
- 1. そもそも「後戻り」って何が起きている?
- 2. 後戻りリスクを左右する7つの“柱”
- 3. リテーナーは「種類」より「設計と続け方」
- 4. 「抜歯した方が後戻りしない?」の真実
- 5. 当院で大切にしていること
- 6. 今日からできる“後戻り予防”のコツ
こんにちは、WE渋谷公園通り矯正歯科です。
「せっかく整った歯並びが崩れてきたかも…」「保定装置(リテーナー)はいつまで必要なの?」——こうした不安はとても自然です。実際、治療後に歯が動いてしまう「後戻り」という現象は、サボったから起きるという単純な話ではなく、骨・歯ぐき・歯の形・噛み合わせ・癖(舌や呼吸)などが絡み合って起きる“生体反応”なんです。
本記事では、専門的なメカニズムを分かりやすく解説し、皆さんが「具体的にどこに気をつければ良いか」を整理できるようにまとめます。
1. そもそも「後戻り」って何が起きている?
矯正治療中は、ワイヤーやマウスピース装置を使って矯正力をかけ、歯を移動させます。しかし、治療が終了したその瞬間に、生体の「元の位置へ戻ろうとする作用」が完全になくなるわけではありません。
歯の周りには「歯根膜(しこんまく)」というクッション組織や歯肉の線維、そして歯槽骨(しそうこつ)があり、これらが時間をかけて新しい位置に“なじむ(リモデリング)”必要があります。ここが整いきる前に、噛む力や舌の癖、頬からの圧力などが加わると、れらが安定する前に負荷がかかると、徐々に歯が動き出し、元の位置へ戻ろうとすることがあります。
後戻りは「気合いが足りない!」のではなく、体の仕組みとして起きやすい局面がある、というのが大前提になります。

2. 後戻りリスクに関わる7つの“柱”
さて、ここからが本題です。後戻りは単一の原因ではなく、様々な要因の組み合わせで起こります。特に臨床で重要になりやすいものを7つに分けます。
(1)骨の条件:下顎前歯の骨の厚さ
近年は歯科用CT(CBCT)で、歯を支える骨の厚みや形が見やすくなりました、当院でも導入しています。中でも、下顎前歯部の後戻りが起きやすいケースでは、骨(特に皮質骨)の条件が関係する可能性があると言われています、骨の性状と後戻りの相関を示唆する研究報告※も存在します。
重要なのは「骨が薄いから必ず後戻りする」わけではないという点です。しかし、安全に動かせる範囲が限られるケースでは、治療計画や保定プランをより慎重に設計する意義が大きいと言えます。
※trabecular and cortical bone as risk factors for orthodontic relapse(2006)

(2)歯ぐき・歯周病:炎症があると安定しにくい
歯槽骨が減少していると歯が傾斜しやすくなるため、歯肉の炎症抑制と継続的なメンテナンスが極めて重要です。「矯正終了=すべて完了」ではなく、そこからが本当の“安定化フェーズ”だと捉えてください。健康な歯を守るための矯正で、逆に歯の寿命を縮めてしまっては意味がありません。
歯を残すために矯正治療をされる方もいらっしゃると思いますが逆に歯がなくなってしまっては本末転倒ですよね。

(3)捻転(ねんてん:歯の回転)の後戻り:線維が“記憶”している
歯が回転していた症例(捻転歯)は、治療後も比較的、元の位置に戻ろうとする傾向が強いとされています。その主因の一つが、歯を取り巻く歯肉線維の働きです。この対策として、症例によっては歯槽骨上線維歯周切断術(CSF)の併用というパターンもあります。CSFが回転の後戻りを抑える有効な方法であり、歯周組織への悪影響も少なく、安全性の高い方法と報告されています
※当然ながら全症例に必須の処置ではなく、回転量・歯周状態・清掃性などを見て判断する外科的な治療です、当院では行っておりません。
※Orthodontic treatment stability and periodontal condition with circumferential supracrestal fiberotomy: a systematic review
(4)歯の形・歯根の条件:短い歯根や歯根吸収がある場合
歯根が短めの方(短歯根傾向)や、矯正治療中に歯根吸収になった歯は、その支えが相対的に不安定になり、安定化のために長期の保定や固定式の工夫が必要になることがあります。
(5)癖・呼吸・筋機能:舌、口呼吸、飲み込みのクセ
開咬(前歯が噛まない状態)の方や舌突出癖、口呼吸といった癖があると、歯列にかかる力の方向が通常とは異なり、後戻りや再発のリスクが上がることがあります。当院でも開咬の方は何かの癖がある方が多くいます。
この場合、治療計画の中にMFT(口腔筋機能療法)や呼吸様式の改善を組み込みます。ただし、MFT単独で必ず安定すると断言できるほどではなく、実際には「保定」と「口腔機能の改善」を両輪で捉えることが重要です。
癖についての詳しいblogはこちら
(6)保定装置(リテーナー)の使用不足や不適合による後戻り
装置が外れた直後の歯列は、一見きれいに並んでいても、まだ“安定しきっていない状態”です。歯槽骨や周囲の歯肉線維が、移動後の新しいポジションになじんで安定するには一定の期間を要します。
この不安定な時期に保定装置を使用しないと、歯は徐々に元の場所へ戻り始めてしまいます。「保定が不十分」といっても、原因は1つではありません。たとえば次のようなパターンがあります。
- 装着時間がそもそも少ない(忙しくて付け忘れる、夜だけのつもりが数日空く、など)
- 合っていないのに使い続ける(きつい・浮く・痛いのに我慢する/逆に緩いまま)
- 破損や変形に気づかない(小さなヒビ、ワイヤーのゆるみ、マウスピースのたわみは変形)
- 固定式リテーナーのトラブル(一部が外れる、接着が弱くなって歯が動く)
- 自己判断で装着ルールを変える(「もう大丈夫そう」で頻度を急に下げる)
ここはとても大事です「リテーナーはサボると歯はわりとすぐに動きます」。動かす期間より戻る期間の方が早いとも言われたりします。
保定はついでではなく、仕上げの治療です。
固定式と可撤式のどちらが絶対的に優れているか、という議論よりも、「患者様の歯列状態・清掃のしやすさ・ライフスタイル・装着への協力度」を考慮して最適解を選ぶのが、現在の標準的な考え方です
(7)親知らず(第三大臼歯)が後戻りの原因になるのか?
「親知らずが押して前歯がガタガタになったんですか?」という質問はとても多いです。結論から言うと、親知らずが“後戻りの主犯”だと断定できるだけの強い根拠は、今のところ一貫していません。
ただし、ここも誤解しないでほしいポイントがあって、親知らずが“まったく無関係”という意味ではありません。
- 親知らずが横向きに埋まっていて、手前の歯(第二大臼歯)に悪影響(むし歯・歯周炎・清掃不良)を起こしている
- そもそも顎のスペースが小さく、奥歯の環境が不安定になりやすい
- かみ合わせや歯列全体の力のバランスが崩れている
こうした条件が重なると、歯並びがずれやすいベースとなって、保定治療の管理も難しくなるという結果に繋がります。ですので親知らずは「前歯を押す犯人」というより、口腔内環境のリスクを高める“間接的な要因”として捉えるのが実情に近いでしょう。

3. リテーナー(保定装置)選びは「種類」以上に「設計と継続性」
よくある質問に「固定タイプとマウスピースなどの取り外しタイプ、どっちが良いの?」というものがあります。実のところ、どちらか一方が圧倒的に優れていると言い切れないと言われています、以下のような条件で選択されることが多いです。
- 戻りやすさ(歯の回転・下顎前歯の叢生など)
- 清掃性(歯石がつきやすい方、歯周病リスクが高い方)
- 噛み合わせの“なじみ(セトリング)”をどれくらい必要とするか
- 患者さんの生活に合うか(続けられるか)
正直、リテーナーは“最強の種類”を探すより、あなたが続けられる形に落とし込むほうが結果が安定しやすかったりします。無理なく続く方法を一緒に作るほうが良いです。
4. 抜歯した方が後戻りしない?
「抜歯矯正=安定」「非抜歯=後戻り」みたいな単純化は、近年は慎重に扱われます。実際の治療方針は、後戻りリスクのみならず、口元の審美性・骨格・歯周組織の状態・歯を動かせる限界などを総合的に評価して決定します。すなわち「後戻りが不安だから抜歯する」のではなく、全体設計の中で必要性が認められた場合に抜歯を選択する、
5. WE渋谷公園通り矯正歯科で大切にしていること
当院では、後戻りも含めて初診・検査の時点から次を意識します。
- CBCTなどで骨・歯根・歯周条件を評価し、リスクを見える化
- 歯周病リスクがある方は、炎症の安定化→矯正→長期管理
- 舌癖・口呼吸などがある方は、MFTや生活習慣の整え方もセットで提案
- 保定は「固定or可撤」ではなく、あなたのリスク×生活で最適化
「治して終わり」ではなく、「整えて、維持・長持ちさせる」。ここまで含めて矯正治療だと考えています。
6. 患者さんが今日からできる“後戻り予防”のコツ
最後に、すごく実用的な話をします。
- リテーナーの装着時間・頻度を守る(まずはこれが大前提です)
- 口の中の乾燥が強い人は、口呼吸チェック(寝起きの喉の渇き等)
- 歯並びが動く前に、違和感の時点で相談(早いほど戻しやすいです)
- 固定式の人は、フロスや歯間ブラシの習慣化(虫歯・歯周病予防が安定につながる)
「めんどいな…」って思う日もありますよね。よくわかります。だからこそ、続けやすい方法に調整しながら、キープしていきましょう
まとめ
- 後戻りは、骨・歯周組織・線維・歯根・癖などが絡む多因子の現象
- リテーナーは“種類の優劣”より、リスクに合った設計と継続が大切
- 捻転歯などは、症例によりCSFが検討されることもある
WE渋谷公園通り矯正歯科のご案内
WE渋谷公園通り矯正歯科では、矯正治療のゴールを「並んだ」だけで終わらせず、長期安定まで見据えた設計を大切にしています。
「後戻りが心配」「リテーナーが合っていない気がする」「昔の矯正が戻ってきた」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。
治療内容
カスタムメイドで制作されたマウスピースを定期的に交換しながら少しずつ歯に適切な力をかけて歯並びを整えていく矯正治療です。
標準的な費用(自費)
矯正治療費、相談・検査・診断料 無料、調整料 無料
インビザライン(マウスピース治療)
198,000円〜899,800円(税込)
治療期間及び回数
症状によりますが、一般的に2年前後の治療期間となります。
通院回数は、治療段階によりますが、通常2〜3ヶ月に1回です。
副作用・リスク
装着時間が少ないと治療期間が長引く可能性があります。
他の矯正治療法と同様に、疼痛・歯根吸収・歯肉退縮の可能性や適切な保定をしないと治療後に後戻りすることがあります。
医薬品医療機器等法(薬機法)に関する記載事項
・インビザライン完成物は、日本国内において薬機法未承認の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
尚、インビザラインの材料自体は、日本の薬事認証を得ています。
・「インビザライン」は米国アライン・テクノロジー社の製品の商標であり、インビザリアン・ジャパン社から入手しています。
・日本国内においては、同様の医療機器が薬事認証を得ています。
・インビザライン・システムは、世界100カ国以上の国々で提供され、これまでに900万人を超える患者さまが治療を受けています。(2020年10月時点)
参考文献
- Rothe LE, Bollen AM, Little RM, Herring SW, Chaison JB, Chen CS, et al. Trabecular and cortical bone as risk factors for orthodontic relapse. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2006;130(4):476-484.
- Hashim NT, Dasnadi SP, Ziada H, Rahman MM, Ahmed A, Mohammed R, et al. Orthodontic Management of Different Stages and Grades of Periodontitis According to the 2017 Classification of Periodontal Diseases. Dent J (Basel). 2025 Jan 29;13(2):59.
- Castaño-Duque SP, Mora-Díaz II, Losada-Amaya SI, Álvarez-Gómez LM, Rengifo-Mosquera LM, Zerpa-Romandini A, et al. Orthodontic treatment stability and periodontal condition with circumferential supracrestal fiberotomy: a systematic review. Rev Fac Odontol Univ Antioq. 2019;31(1-2):122-135.
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